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日本の伝統工芸『絞り技術』×『ヨーロッパ』ファッションデザイン手法

Fashion

WFN:Interview

2017年より海外に活動の場を移すためロンドンへ。

1935年に創立され、極めてインターナショナルな環境(ミラノ、ロンドン、パリ、上海)のファッションスクール『Istituto Marangoni London』にて『Master of Arts in Fashion Design Womenswear』に在籍。ヨーロッパのデザイン手法を学び日本で培った経験をもとにデザインを作り上げています。

メインの研究として、日本の伝統工芸『絞り技術』をこれまでにない活用の仕方でデザインに取り入れる事で、新しい価値観を創出することに挑戦。それにより後継者不足・業界の縮小に直面している、伝統技術の保存を促進する事も大きなテーマになっています。

絞り技術

絞りのサイズ・パターンによって生み出される個性的な生地感・外観に着目し、生地の流動性・ドレーピング適応性を生かす素材を開発。日本の工房・加工場訪問と日本ーイギリス間でのコミュニケーションを重ね、協力企業と新しい加工も開発中。

2018年イタリアのデザインコンペティション『Mittelmoda 25th Edition』にノミネートされ、ファッションショーに参加。また同年イギリスの新人デザイナーサポートコンペティション『Fashion Scout』にもノミネート。2019ロンドンファッションウィーク期間中には『Poliform London』にてコレクションの展示・エキシビジョンに参加。

中村淳

中村 淳(Jun Nakamura)
同志社大学法学部卒業後、呉服業界へ。離職後、大阪モード学園にてファッションデザインを専攻し、東京のアパレルメーカー/OEM会社にてデザインから企画・生産と幅広く従事。
2017年よりロンドンの『Istituto Marangoni London』にて修士課程に在籍し日本の伝統技術を新しい手段でデザインに活用する事により伝統技術の保存・継承を促進。
»Instagram @junnakamura_

WFN:イタリア系の大学院に在籍されていますが、どのような環境や特徴がありますか?

中村 淳(以下、中村):『Istituto Marangoni London』では多くの学生・講師が海外出身者で、ロンドンの土地柄もあり色んな言語が飛びかっています。異なる国・環境で働いたり学習したりしてきた人が集まっているので、それぞれ得意分野が違ったりして面白いです。

また、経験豊富な講師陣が集まっているので、有名メゾンのクチュリエやドレーピングのエキスパートなどから、この1年間かなり凝縮して指導されました。

スケッチ

WFN:ロンドンという海外の環境で学ぶことにより、デザインのプロセスや発想はどのように変化していきましたか?

中村:以前は頭で考えたり小さいサンプルを作ってデザインしたりしていましたが、ドレーピングを最初にしたり、特に型にこだわらず思いついた事から進めていくようになりました。また、インスピレーションのリサーチ、デザインを始めてからのリサーチ、その後のリサーチ・・・と常に調べものをしながらひたすらスタンドワーク・スケッチを描き進めていき、短期間でコレクションを完成させる事を繰り返しました。

歴史的な学術的リサーチと対比し、アート分野での『描く』事で発見していくリサーチも集中的に学びましたが、とても興味深くここで学べた事は自分のキャリアの中でも宝物になりました。

デザイン画

WFN:修士論文の研究テーマが『絞り』という事でしたが、自身の呉服業界での経験が関係していますか?

中村:着物に使用している染等の技法は、ファッション業界で使用されていない独自のものが多く、何か活用したいなとは思っていましたが絞りは特に考えていませんでした。

アート系の図書館で調べものをしている際に、たまたまコートジボワールの『ディダ』をいう工芸品を見かけたのですが、これが絞りによく似た技法で、細かい絞りを使えばダーツなしで形を作ることができるかも・・・と思ったのがきっかけでした。

WFN:『絞り』を使用することにより、難しかったポイントはありますか?

中村:過去の文献等を調べても、基本的に無地の生地に印をつけてそこを基準に絞っていく方法でファッション用にも使用例がありました。しかし、インスピレーションが抽象画という事もあり、プリント生地の上から絞りを入れたのですが、印が付けれないので技術的に色々な制限がありました。

また加工後の生地が予想以上に動くのと、裁断後パーツのアウトラインが全て無数のタック状になるので裁断・縫製にはかなり苦労しました。

ファブリックマニピュレーション

WFN:コレクションについて教えて下さい。

中村:元々抽象画からデザインする事に興味があり、ロンドンで見つけたいくつかの抽象画をインスピレーションに進めました。メインのアートが雑多な要素で構成されたものでしたので、3種類のプリント生地他レザーやフェザーなど多くの素材を取り入れました。バランスを保つのにかなり苦労しました。

スケッチ

WFN:『Mittelmoda』への参加について教えて下さい。

中村:ちょうど3期目のコレクション製作を仕上げている段階で、選考通過通知が届きました。インターンも控えておりスケジュール的にかなり無理があったので辞退しようとも考えましたが、デザインコースのプログラムリーダー含め『Marangoni』からのバックアップもあり参加する事に決めました。

タイトなスケジュールの上に絞りのサンプルもまだ進めている段階で、結局最終サンプルを手元で確認することなく本番加工を進めました。

手作業での加工でLTが通常2ヶ月かかるところ、無理を言って1ヶ月ほどで加工して分納で送って頂きかなり助かりました。ただ、それでも最後の生地は締切1週間前にぎりぎり届き、たくさんの方に助けて頂き何とか仕上げる事が出来ました。協力して下さった皆さんにとても感謝しています。ベニスのベネトン本社がショー会場だったのですが、6体製作して参加したファッションショーはとてもいい経験になりました。

Mittelmoda

WFN:『Poliform London』でのエキシビジョンはどのようなものでしたか?

中村:『Marangoni』と『Poliform』のコラボレーションという形で、Poliformのショールームに展示する機会を頂きました。多ブランドのデザイナーさんや一般の方までたくさんの方に見て頂き、どこにお店があるのかとかどこで買えるのかなど質問されて予想外で(コンペティション用に準備したデザインでしたので)驚きました。

絞りの職人さんとお話しした際、ヨーロッパの方がアートや伝統工芸がより生活の中に身近なものとして受け入れられているとお聞きしましたが、それを実感する形になりました。

縫製

WFN:今後の抱負を教えて下さい。

中村:しばらくロンドンでデザインする事を考えています。どこかのメゾンに所属するか、自分のレーベルを本格的に進めるのか、どちらにせよ絞りの新しい加工サンプルも進めておりまだまだ色んな可能性が見えていますので、日本の伝統工芸をヨーロッパから発信していきたいです。

開発中のサンプル

WFN:最後に、海外で日本人が『作品』や『想い』を発信することについてどのように考えていますか?

中村:とてもポジティブな事だと思います。

イギリスに来てから色んな国の人と話しましたが、日本の文化・技術・ファッションに興味を持っている方がかなり多いです。ロンドンでも有名なアーティストの展示が開かれたり、日本食レストラン等ありますが、ほんの一部しか見られていないと感じます。

“興味はあるけどよく知らない”状態で、好意的な受け皿があると思いますし、ありがちな話ですが典型的な情報のみで日本の全てが印象付けられている感じもしますので、日本の様々なアートや工芸品を、海外の方が見る機会が増えるといいなと思います。

日本人に対しても『勤勉,まじめでポジティブ』なイメージがあるようなので、コミュニケーションに関しても基本的には受け入れてもらいやすい環境があると思います。あとは海外で発表する機会があると、そもそもの文化や環境、常識、考え方が国によって全然違いますので、単に“経験”と言うよりもそれ以上の日本では見えない“色々な気づきや前向きな変化”が得られると思います。

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