【急速に進化した国内ファッションビジネス】時代錯誤な商慣習
C to C、D to Cを筆頭に、いかに直接消費者に訴求出来るかというビジネスモデルが急速に発展し、スタンダードになった昨今のファッションビジネス。
本稿では10年前、20年前では予想だにしなかったビジネスモデルを過去の事象と共に振り返り、今後の課題と問題点について考えてみたいと思います。
本記事の内容
- 百貨店の流通システムとアパレル業界
- 日本特有のファッションビジネスについて考える
- ファッションシーン、ビジネスの変化における今後の課題
百貨店の流通システムとアパレル業界
日本国内において”服が売れた時代”は百貨店を抜きには語れません。
従来のアパレル企業、ファッションブランドは百貨店流通、主に*委託販売で生計を立ててきました。(※製造業者が製品の販売完了時まで所有権を保持したまま問屋や小売店などに製品の販売を委託すること。定価販売および一定期間経過後の売れ残り製品の返却が前提となる。)
これらがメインの販売システムとしてモデル化されていった背景には、国内のアパレルビジネス特有の理由がありました。
日本特有のファッションビジネスについて考える
国内のアパレルビジネス(主に百貨店)には委託販売のみならず、インポートの買取品や販売代理店(ジャパン社)、各社エージェントとの契約上、個店帳合という壁が存在します。
これは同じ百貨店でも各店単位でのバイイング、仕入れ、販売実績といった商慣習です。つまり小売り側に在庫運用する権利はなく、販売代理店(ジャパン社)、各社エージェントが流通をコントロールするということです。
東京都心の店舗で取り扱っている商品を、ブランド側(販売代理店、各社エージェントを含む)の了解を得ずに大阪や名古屋や地方の店舗へ送り、そこで販売することが出来ないということです。
無論、服が売れる時代はこれらのシステムで良かったものの、SPAやファストファッションの台頭もあり、アパレルマーケットにおける消費動向やモノづくりは大きくバランスを崩しました。
服が売れなくなっていると言われている昨今、このようなシステムで消化率が上がるはずもなく、今日現在においてもこの商慣習が蔓延している事実には大きな疑問を感じざるを得ません。
個店帳合というシステムの下、小売り側が国内ブランドの流通、ディストリビューションの責務を果たさないビジネスモデルが基盤になってしまったことが、国内のアパレルビジネスが世界に後れを取った大きな要因であると考えます。
» 参考:日本国内における特有のFB【ファッションビジネス】
ファッションシーン、ビジネスの変化における今後の課題
地方の百貨店では物が売れない為、アパレル商材の仕入れにブレーキがかかります。これによりますます売り上げは低下の一途を辿り、負のスパイラルに陥るしかありません。
本来であればオムニチャネル化、サテライト事業を推進させるべきではありますが、ITリテラシーの低さからなのか未だ旧態依然としたシステムの中で模索しているように感じます。
こうした小売側の問題点はもちろんのこと、モノづくりをするブランド、企業もステレオタイプのやり方、考え方では時代についていくことは不可能です。
商品に対する価値と並行して、自社商品の流通経路や販路についてしっかりとした考えを持っていることが、これからの時代には必要不可欠な要素なのではないでしょうか。
石本 遥路
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