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【ANTAとLINING(李寧)に見る】中国スポーツアパレルブランドの2020年振り返りと今後の課題

Fashion

3000億元(4.6兆円以上)と1000億元(1.5兆円以上)。これは中国のスポーツアパレルブランドのANTAとLINING(李寧)が2020年に突破した時価総額規模である。新型コロナウィルスCOVID-19の悪影響を受けてもなおたくましく市場価値成長を続けている。

新型コロナウィルスCOVID-19の影響を受けて2020年の前半に株価の暴落を経験した中国のスポーツアパレルブランドは少なくない。それでも、中国市場ではスポーツブランドに将来性があるという見方が強まっている。多くのブランドの売上高は第3四半期でマイナスからプラスになり、株価を回復させる大型スポーツアパレルブランド企業も少なくなかった。

ANTAとLINING(李寧)だけを見ても、株価はそれぞれ73%、124%上昇した。

新型コロナウィルスCOVID-19の影響による健康志向の高まりや、マーケティングや販売におけるオンラインの活用をもともと強めていたことも、成長の追い風になっている。

まだまだ収束への道は長いものの、区切りとして、辛い辛い一年がついに終わった。この一年間、中国のスポーツブランドは何を経験してきたのだろうか。

本記事の内容

  • 新型コロナウィルスCOVID-19が後押しとなったモデルチェンジ
  • 2021年最大の課題のひとつ「在庫改善」

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新型コロナウィルスCOVID-19が後押しとなったモデルチェンジ

中国スポーツアパレルブランド

新型コロナウィルスCOVID-19の有無に関わらず、2019年と2020年はスポーツブランドにとって、ビジネスモデルを進化させていく鍵となる年だったと言える。数年をかけて成長速度が徐々に緩やかになっていく中で、あらためて企業経営の基盤固めや軌道修正を余儀なくされていた。そんな中、大きな成長を妨げる問題の発見と解決をサボっていた企業にとっては、新型コロナウィルスCOVID-19に大きく背中を押される形ともなった。

その中でもANTAとLINING(李寧)は、外部から見ていてもわかりやすいくらいの変革を行っていった。

2020年8月、ANTAはメインブランドのひとつであるDTCのモデルチェンジを発表し、話題となった。モデルチェンジによるDTCのブランドマネジメントには高いスキルが必要とされる。だが、ANTAはFILAやDESCENTEの直営経験があるため、投資家たちは好意的に見ているといえる。ちなみに、ANTAグループの2020年の報告によると、全ての直営モデルの中でのFILAの売上比率はすでにメインブランドのANTAを超えている。
» 参考:ANTAから見る中国のキッズスポーツアパレル【熾烈な競争へ】

LINING(李寧)はさらに早い段階から改革を進めていた。それは2010年のリブランディング開始に端を発するのだが、その後2019年9月、新CEOの钱炜が就任して以来、企業として財務体質の健全化をさらに進めてきた。

2020年の上半期報告データによると、6ヶ月の間に、LININGは約500店舗を閉店したが、店舗全体の営業面積と各店舗の面積は共に10%以上増加した。また、営業利益は2019年同期と比較し、大幅に上昇した。
» 参考:【中国を賑わす「国潮」とは何か】中国ブランドリーニン(李寧)の躍進の秘密

ここまで耳触りのいい情報ばかり書き連ねてきたが、もちろん全てがよいことばかりではない。例えば、ANTAが2019年に手に入れたスポーツブランドAmer Sportsや、X-tepが2019年から始めたマルチブランド戦略の中のブランドポートフォリオに含めているK-Swiss、Palladiumなどは、新型コロナウィルスCOVID-19の影響により利益が大幅に圧縮され、親会社の経営に影響を与えた。しかしそれでも、中国市場はまだ楽観的な見方を崩していない。

中国の国産投資証券は、Amer Sportsに対する潜在的な収益圧力は2021年の下半期までは続かないと考えており、X-tepのブランドがもし2022年度にブランドの再生を完了できたら、以前よりも高い売上及び利益が取れると期待している。

2021年最大の課題のひとつ「在庫改善」

中国スポーツアパレルブランド

そしてなんにせよ、中国のアパレル業界にとって最大の課題のひとつは「在庫」だ。

各ブランド、2020年上半期での在庫回転率を大幅に下げた。下半期で一部消化改善され、直営以外のセレクトショップなどの販売先での売上自体も回復を見せつつあるものの、業界全体としてはまだ平常水準に戻ってはいない。この影響は2021年にも続いていくだろう。

日本や欧米諸国でも同様の課題はあるだろうが、市場がかなり回復しつつある中国市場でもこの課題はまだ続く見込みであり、この傾向やタイムラグはひとつの参考といえるだろう。

兒玉キミト

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