【中国でファストファッションが挑む新たな道】服を売るだけではダメ?
今年、ブリティッシュアパレルブランドのNEW LOOKと、ファストファッションブランドTOP SHOPが中国市場に敗れ、撤退を決めました。
アメリカの言わずと知れた大手ファストファッションブランドGAPも、第3季の業績が低迷し、H&Mの傘下であるCheap Mondayもブランドの終了を決めました。このように、ファストファッションブランドたちは中国市場で衰退期を迎えているといえます。
» 参考:【中国とアメリカでのH&Mの品質問題】ヒトはなぜ品質に注目するのか
ここ数年中国市場を支配しているファストファッションブランドであるZaraは、最近新しい試みを始めています。2018年12月5日、ZaraはリップクリームシリーズのZara Ultimateを発売、このシリーズは12本の高色素リップクリーム、8本の液状リップクリーム、それとリップペンなどのアイテムを含んだセット「TRIO SET」も発売しました。
色はクラシックな赤、ピンク、ワインレッドとブラウンを中心とし、世界中のオンラインサイトとSNS内のEC機能のみで販売されています。
アパレル業界内におけるファッショントレンドに対して、ファストファッションブランドはいつもいち早く反応しています、だからこそ今回、Zaraの動きは業界内で幅広い注目を集めているといえます。
日本のアパレルブランドの中でも一部トレンドになってきていると思いますが、中国市場におけるファストファッションブランドは、業績の向上、製品ラインナップの拡充、ブランド知名度の向上を目的に、コスメ業界に進出してるだけではなく、アパレル以外のカテゴリのおいて、さまざまな試みを行っています。
本記事では、中国市場を事例に
- ライフスタイル、家具カテゴリ
- ペットアパレルカテゴリ
- メイクと香水カテゴリ
上記三つにおけるファストファッションやアパレルブランドの試みについて紹介していきます。事例は中国市場になりますが、中国市場だけでなく、世界中でも同じトレンドだといえます。
» 参考:【中国アパレル】市場規模はこんなに伸び続けている【EC,通販も】
ライフスタイル、家具カテゴリ
ファストファッションから家具カテゴリへ
Zaraは一番早くこのカテゴリを手がけているファストファッションブランドです。
2003年に親会社のInditexグループがZara Homeを開始しました。アイテムの方向性は、手軽なオシャレ感。その後、H&Mも2009年に同じくH&M Homeを出しましたが、その時のZaraはもうファストファッション市場の家具の分野でトップの地位を築いています。
2011年、Zara Homeが北京で初のお店を開設したときには、全世界ですでに310軒の店舗数に達していましたが、H&M Homeはまだ独立の店舗が無く、他ブランドの店舗内でのショップインショップの業態が中心でした。
ファストファッションから家具カテゴリへ
大手のファストファッションブランド以外にも、このトレンドの影響を受け、ライフスタイルグッズや家具をデザインし始めるアパレルブランドは数多くありました。
中国市場でいうと
- 2011年にMJStyleグループと太平鳥グループの太平鳥・巣
- 2016年JNBYグループのJNBY Homeと拉夏贝貝尔のLife Ciecle
- 2017年の海澜优选
など。これらのブランドのスタイルは、彼らのアパレルとしてのブランドスタイル以外に、MUJIからも大きな影響を受けています。特に、MJStyleとLife CricleはMUJIとスタイルがかなり似通っています。
現在の規模を見ると、ファストファッションブランドでトップのZara以外のアパレルブランドは、ライフスタイル・家具カテゴリにリソース投入してはいるものの、がんがん規模を拡大する考えはないようにみえます。
このカテゴリにリソースを投入したのも、テスト的な意味合いと、アパレルカテゴリに対するサポートという位置付けが強いです。
ペットアパレルカテゴリ
中国で加速するペットマーケット
2018年11月8日、MoschinoとH&Mのコラボシリーズが発売、その中にはペットのための服も含まれていました。
これは2つのブランドにとっても初めてのペット服展開となりました。H&Mは「ペット服はまた次のコラボシリーズでも発売予定だが、現時点では新しい試みで、単独で店舗を開く可能性は小さい。」とコメントしています。現在のH&Mはキッズ、メンズ、レディースがメインで、オンラインではそれ以外にH&M Homeのシリーズも販売しています。
ペットカテゴリは経済成長が高い水準に入った時に派生するニューマーケットです。
中国でもペットマーケットの成長は著しく、ペットを飼うという概念の普及とペットカテゴリのサービスが広がるに従い、中国のペットカテゴリの市場はさらに拡大しています。
今後数年は20%以上の高成長を維持し、2018年には中国のペットカテゴリの規模は1678億元(約2.7兆円:※2018年12月時の為替レートでの参考)にも昇ると予想され、2022年までの市場規模は2500億元(約4兆円:※2018年12月時の為替レートでの参考)を突破する見込みです。
ペット服のハイブランド化
この流れの中でペットカテゴリは、多くのブランドの注目を集めています。先日のPet Fashion Showでは、Touchdog、AliceD、Cheepet、Dogismileなとのブランドが、Alibabaグループの天猫(Tmall)で100SKU近くの新商品を発表しました。また、Monclerと高級ペット服ブランドPoldo Dog Coutureも、昨年に続き今年も新たなシリーズを発表しました。
この流れからもわかるように、ペット服の位置はファッションハイエンド化に向かっています。普段はリーズナブルを優位性にしているH&Mにとっても、今回Moschinoとのコラボレーションは、消費者に対する新しい試みで、ブランドに新鮮な空気を入れることが目的だといえます。
ファストファッションというマーケット自体はプライスゾーンが制限されてしまっているので、ペット服カテゴリで新たなプライスゾーンを試していきたいという狙いもあります。(ファストファッションのハイエンドブランドとのコラボは、ペット服に限らず言えることですね)
メイクと香水カテゴリ
伸び続けるコスメ業界への進出
Zaraの親会社ですinditexグループは香水とコスメ市場に再投入を計画しています。2018年10月末、Inditexは傘下のメインブランドMassimo Duttiの香水アイテムをアップグレードしました。また、2018年12月5日、ZaraはリップクリームシリーズZara Ultimateを発売しました。
高級ブランドからカジュアルプライスのブランドまで、さまざまなブランドがコスメ業界に進出しています。公開されているデータでみても、コスメ業界の伸びはアパレル業界の伸びを上回っています。服は売りにくくなったと言われるこの時代だからこそ、ますます多くのアパレルブランドが化粧品のビジネスをやり始めたことはすんなり理解できます。
ファストファッションの時代に合わせた変化
ファストファッションブランドとアパレルブランドがコスメ業界に投入するのももう新しいことではありません。Inditexグループ傘下の8つのチェーンブランドの中、Uterqüeだけオリジナルの香水アイテムを発売していませんが、他のブランドはZaraとPull&Bear、Bershkaを含めて、大なり小なり化粧品の分野にアイテムが関わっています。
他のファストファッションブランド、例えばForever21、H&M、Topshop、Urban Outfittersなども、みなコスメ業界に参入しています。いわゆるアパレルブランドと比べれば、ファストファッションブランド達のコスメ商品の知名度はそんなに高くはないですが、ブランドの業績向上には確実に役割を果たしています。だからこそ、Zaraもあらためてコスメ市場への進出を宣言したんだと言えます。
ご紹介したどのカテゴリにしても、ファストファッションブランドは真剣に取り組んでいます。そういう意味では、「服を売る」ことからブランドの「ファッションに対する理念」「提供したい価値」に重点がシフトしているのかもしれません。
今回のこのトレンドは、単純なカテゴリ拡大ではなく、時代に合わせた考え方のシフト、と考えたほうが、今後の動きも面白くウォッチしていけるのではないでしょうか。
兒玉キミト
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