リーニンのコーヒーブランド商標申請にみる中国アパレルとコーヒーの関わり
(画像出典元:リーニン)
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アパレルブランドとしての次の領域開拓
中国のアパレルブランド リーニン(LI-NING)が今月2022年5月に“宁咖啡 NING COFFEE”を商標申請した。
3月にネスレとのコーヒー領域でのコラボレーションを行なったばかりだが、この商標申請により、今後本格的にコーヒーやカフェの領域を開拓していくことが鮮明となった。
リーニン(LI-NING)は、1990年に創業した、中国最大級のスポーツアパレルブランドのひとつ。
1980年代を中心に生涯で14個もの世界タイトルを獲得し、中国で最も有名な体操選手である“李寧”の名前を冠している。
近年は従来の低価格スポーツアパレルからの大きな脱却を目指し、インターナショナルアパレルブランドとしての挑戦を強め、パリファッションウィークやニューヨークファッションウィークなど国際舞台へたびたび姿をあらわすようになっている。
2020年には創立30周年を迎え、現在もブランド価値・売上ともに中国で強い存在感を放っており、現在売上規模は100億元(2000億円※)を超える。
日本でもatmosなどの人気ショップでの取り扱いもあり、スニーカー好きやファッション好きの層を中心にリーニンの認知は徐々に広がっている。
※2022年5月現時点での為替レート概算
中国でのコーヒーやカフェ市場の気運の高まり
中国のコーヒー市場は年率20%以上の成長を続けており、2025年に1兆元(20兆円)に達すると言われている。
このコーヒー自体の需要の高まりとそこから派生するカフェ市場の成長が、今回の進出の背景にあるだろう。
エルメスやルイヴィトンなどのラグジュアリーブランドも含め、世界的にもファッションブランドやアパレルブランドがコーヒーやカフェ領域に進出することは増えているが、中国でもラルフローレンが北京に、ディーゼルが寧波にコンセプトカフェをオープンさせているように、この気運は年々高まっている。
この気運は中国の現地ブランドでも同様であり、2014年の創業当初からカフェを併設し現在ではオリジナルブレンド豆の販売も行うストリートブランドDOEを筆頭に、中国ブランドやセレクトショップでもこの傾向は強まっている。
また、国内外のデザイナーズブランドを多く取り扱うセレクトショップin the parkがtequila coffeeを店舗内誘致しているように、現地の人気のカフェと提携し、ショップ内にカフェを併設する形も今後増えてくるだろう。
日系ではニコアンドのカフェ業態は上海現地でも人気があり、蔦屋書店も日本同様カフェ業態に力を入れている。
ダイナミックに変化していく中国のカフェ・コーヒーマーケット
とはいえ、上海に住んでいる身としては街を見渡したときのカフェの数はあまりにも多すぎるというのが実感ではある。
コーヒーを飲む層は確実に増えているが需要と供給がどちらもダイナミックに動いている分バランスはとれていないし、出せば売れるというような状況でないことも確かだと言える。
そういった意味で、あまりに競合が多いため安易にコーヒーやカフェ領域に進出すればいいというものではないが、コーヒーの需要による進出だけが背景にあるのではなく、ライフスタイル提案をしたいブランドにとってはそういったメッセージを顧客に投げかけることにもなるので、今後もしばらくは増え続ける可能性が高い。
自社のブランドの個性や特性を活かした上で試みを進めていくブランドは、リーニン(LI-NING)に限らず今後も増え続けるだろう。
カフェ自体や、コーヒーやカフェ領域に進出するブランドがタケノコのように増えていく中で、淘汰されたくさん潰れ、その中でも独自の価値を作り上げたカフェやブランドが生き残っていく。
そのダイナミズムを感じられることが、今後もとても楽しみだ。
兒玉キミト
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