中国の3ピースバンド結氷水から見る中国のカルチャーシーン
(出典元:WFN撮影)
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地方出身、同じ学校出身のインディーズバンド
結氷水(簡体字読み:结冰水)。福州出身の3人からなる3ピースバンドだ。
メンバーはボーカル兼ギターの云逸、ドラム兼コーラスの少爷、ベースの大叔。
2018年に結成し、この数年、インディーズシーンで徐々に存在感を強めている。
今年2021年に発売したミニアルバムEverything About Tonightを引っさげ、2021年6,7月は中国全土12都市でのライブツアーを行っている。
何かに当てはめない魅力
バンド名は直訳すると”凍った水”。
はっきりとしたものと曖昧なものの間のニュアンスを常に大切にし、それを氷と水の間の関係性になぞらえているバンド名だ。
それは彼らの音楽性にも表れていて、一言で言い表せない様々なジャンルをクロスオーバーさせている。
中国で人気のあるヒップホップや昔から続くロックカルチャーからの文脈ではなく、アシッドジャズやシンセウェイブ、オルタナティヴR&Bなどの要素があり、その力の抜けた揺らめく音楽が心地よい。
地方出身なのに、都市部の日常や心象風景を感じさせる部分がある。しかもそれは中国に限らず、どこか無国籍な感じもする。
それは基本英語を用いている歌詞が影響している部分もあるだろう。
その音楽性はとても洗練されている一方で、MCになると早口の福建訛りで垢抜けない。
その影響もあってライブハウスではMC時には笑いが絶えず、その洗練と朴訥のギャップも彼らの魅力のひとつなのだといえる。
わかりやすさや知名度偏重からのカウンターパンチ
ライブの客層は10代20代の女性がほとんど。
手に届かないものを崇めるというよりは、音楽性とともに彼らの人柄に惹かれ、応援しているといった印象を受ける。
ファン層の子達は、自分を気負わず、リラックスしている印象が強く、彼女たちのファッションにもそれが現れている。
ハイブランドというよりは、ファストファッションや古着やインディーズブランドを自分なりに組み合わせて、自由に自分を表現している。
以前はファッションも音楽もわかりやすいものが好まれる傾向にあった中国だが、結氷水のように、一言では言い表せない個性をもつアーティストやデザインを好む層も、若い人たちを中心に急増している。
知名度が高いものが好まれるのはもちろん当然のことなのだが、そのカウンターパンチとして、個性のあるインディーズに対しても光が当たりやすくなっている。
ハイブランドの売上の高さがニュースに取り上げられる一方で古着屋や個性ある路面店が増えていることもその事象のひとつだと言えるだろう。
まだまだマクロ経済やGDPでは計れないが、ファッションや音楽のカテゴリで確立しつつある個性あるインディーズシーン。
ニューカルチャーとしての成長は続く。
兒玉キミト
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