【原価率の高い服はコスパが良い?】アパレルブランドの高品質・低価格
本記事の内容
- 高品質を見極める力はあるのか?薄利多売ビジネスがもたらした弊害
- 『Everlane(エバーレーン)』から考察する国内アパレル企業
- 『Ameri VINTAGE(アメリヴィンテージ)』にみるアパレル企業の未来
高品質を見極める力はあるのか?薄利多売ビジネスがもたらした弊害
分業されたアパレル業界
洋服というものは完成までにいくつもの過程を経由します。
- 業界内では「川上」と呼ばれ、繊維や染色、加工といった洋服の原材料にあたる部分を製造するセクション
- 川上で製造したものを使用し、生地から服をつくり、商品を生産する「川中」
- 川中でつくられたものを消費者に売る場、小売りや流通を担う「川下」
こうして分業されたアパレル業界ならではのルールで洋服は作られています。
近年ではこうした分業制のコストをカットするべくSPA(製造小売業。アパレルメーカーが既存の卸売業者や小売業者に頼ることなく、直接販売する業務形態)やPB(プライベートブランド)が多く誕生してきました。
“薄利多売ビジネス”の隆盛
ここからは周知のようにファストファッションやそれに準ずる“薄利多売ビジネス”の隆盛です。アパレル業界にも、いわゆる”トレンド”が存在し、数多くのアパレルメーカーが成功事例をもとに新ブランド、新業態に心血を注ぎました。
薄利多売ビジネスが行き着く先は、価格競争です。¥990 ジーンズの登場やしまむらの台頭。上記のビジネスモデルで利益が確保できなくなると、更に品質や素材のコストを削り、利益の確保に奔走しました。
ビジネスである以上、利益の追求は当たり前のことです。しかし低価格化の一途を辿り、ここ十数年で巻き起こったトレンド”薄利多売ビジネス”は消費者から審美眼、見識を取り上げてしまったのです。
アパレル業界のみならず、一方に傾倒したビジネスシーンにおいて、それらへのカウンターが生まれるのは至極当然のことです。近年では低価格化への対極として高原価率、高品質を誇るブランドやメーカーも誕生しています。
しかし審美眼、見識、見る目を養う機会を奪われた消費者を動かすのは並大抵のことではありません。
『Everlane(エバーレーン)』から考察する国内アパレル企業
この記事を読んでいる方の中で「Everlane(エバーレーン)」という企業をご存知の方はどれほどいらっしゃるでしょうか?
知らない方のために簡単ではありますが「Everlane」について説明致します。
2011年に米サンフランシスコで創業。
自社開発した商品をネットで直販するSPA型企業。生地の材料費、部品代、労務費、他の経費、輸送費という原価の内訳情報を開示して販売。
ショールーミング型の店舗を構え、店内からオンラインストアにて決済を行い、数時間以内に倉庫から配送。
尚、百貨店に店舗を構えるアパレルブランドは、原価に対して5~6倍の販売価格を設定しているが、Everlaneは原価の2~3倍に設定しています。
原価の内訳情報を開示して販売しているという点ばかりに着目されますが、Everlaneでは商品構成やECにおいての商品画像の撮影クオリティ、デリバリー環境の整備にも配慮しており、着実に業績を伸ばしています。
ここで注目して頂きたいのが「原価率」という項目。
Everlaneが業績を伸ばす中、日本国内でも某セレクトショップ業態のPB等が原価率の高さが高品質に繋がるといったアピールのもと注目を集めました。
原価率50%と聞くとこのように感じる方も多いかと思います。
¥50,000の商品があったとします。この商品の原価率(50%)は¥25,000
¥25,000で作られたものを¥50,000で販売している。多くのアパレルブランド、メーカーは原価率を25-30%辺りに設定している為、他ブランド、メーカーで買ったら¥83,000~¥100,000相当の商品。
しかし、原価率というのは売上に占める原価の割合を示した数値。
前述したように服を作る過程は分業制。川上から生地を仕入れた際に生まれるコストや、川中で製造、量産するコストも当然、原価率に関わってきます。
つまり、多層化から生まれる余分な輸送コストや人件費、マージン、製造段階で生まれるミニマムに届かない低ロット商品に対するアップチャージ(生産数が一定の枚数に届かない場合に発生する追加料金)もこれに分類されているということです。
極論ではありますが“原価率”は作り手側の裁量でどこまでも高く設定できるのです。
上記からも分かるように高原価率の商品は必ずしも高クオリティではないということが言えます。
『Ameri VINTAGE(アメリヴィンテージ)』にみるアパレル企業の未来
アパレルマーケット内での強化
「Ameri VINTAGE(アメリヴィンテージ)」を展開するB STONE 株式会社は、生産や物流のプロセスにおけるインフラの向上によって顧客へ高品質な商品をより手頃な価格帯で提供することを目的とし、中国・上海に現地法人となる「B STONE (shanghai) Trading Company LTD.」を設立。
同社の18年7月期売上高は約18億円、直営店は代官山とルミネ新宿ルミネ2の2店。
黒石奈央子CEO(最高経営責任者)兼ブランドディレクター自らのSNSでの発信力も伴い、現在ECサイトでの売り上げが7割を占めています。
人気の上昇、売り上げの増加に伴い、供給量や店舗数の拡大…といった手段ではなく、製造過程や物流費という内側に目を向け整備を施す、いわば中長期的な計画で着実に事業拡大を目指す姿勢は見習うべきかと考えます。
業績が悪化すると赤字店舗を閉店、それに伴う人件費の削減。
業績が上がるとオンラインとオフラインを繋げるという名目のもと販路を拡大し、悪くなれば振り出しへ…。
小売店を中心とした解決策では、問題の表面を整えただけに過ぎません。
きちんとしたロジックのもと、整備された生産背景、戦略を再考することが未来への結果に繋がるのではないでしょうか。
石本 遥路
日本国内における特有のFB【ファッションビジネス】
インフルエンサーらがこの数年で作り上げた日本のファッションビジネスモデルは、方法としては確かに新しいものではあるが、根幹部分にある価値観を再度表面化させただけに過ぎません。B to Bのみならず様々なビジネスモデルが乱立してきているこの時代、ファッションビジネス自体も新たなフェーズに突入している。
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