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【中国を賑わす「国潮」とは何か】中国ブランドリーニン(李寧)の躍進の秘密

Fashion

(出典元:李寧)
LI-NING(李寧)。1990年に創業した、中国最大級のスポーツアパレルブランドのひとつだ。

1980年代を中心に生涯で14個もの世界タイトルを獲得し、中国で最も有名な体操選手である“李寧”の名前を冠している。

今年2020年に創立30周年を迎え、ブランド価値・売上ともに中国で強い存在感を放っている。日本でもatmosなどの人気ショップでの取り扱いもあり、スニーカー好きやファッション好きの層を中心にリーニンの認知は徐々に広がっている。

ここ数年破竹の勢いを見せる「リーニン(李寧)」。そのリーニン(李寧)も、今のポジションにいたるまでは簡単な道のりではなかった。

本記事の内容

  • 北京オリンピックがきっかけの急成長、そして低迷
  • 転機となった真っ赤なボックスロゴ

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北京オリンピックがきっかけの急成長、そして低迷

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2008年の北京オリンピックによって、スポーツブランドブームとナショナルブランドブームがひとつの契機にもなり、2009年にはアディダス(adidas)を抜き中国のスポーツアパレルマーケットの2番手となったリーニン(李寧)。2010年にはロゴも一新し、新しいブランドコピー「Make the Change」も打ち出し、初の100億元(約1,500億円)を超え、絶好調にも思えた。

しかし、ロゴの一新への期待とは裏腹に、2010年以降、90年代生まれ(90后)世代に対してブランドコンセプトやストーリーを明確に打ち出すことができず、成長が止まり、むしろ業績は下降していった。

2012-2014年ごろは赤字も続き、在庫消化のために安売りをするアウトレット販売を目にする機会も増え、ブランドのポジションがどんどん揺らいでいった。

このままリーニン(李寧)は低迷を続けていくだろう。そんな声も聞こえてくるほどの状態だったリーニン(李寧)だが、経営陣が大きく意識を変え、反撃に転じる。

転機となった真っ赤なボックスロゴ

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経営革新を行うにあたって、リーニン(李寧)が最初にしたことは、「Make the Change」というスローガンに立ち戻ることだった。

2015年、リーニン(李寧)は新たに大規模な若年層への消費者調査をスタートさせ、ブランド戦略も大きく変化させ、よりファッション性が高く豊富なスタイルを追求する方向に舵を切った。2017年10月末、リーニン(李寧)は初めて公式WeChatアカウント上で通常のリーニンロゴとは別の「中国李寧」と書かれた赤いボックスロゴを打ち出した。

このロゴは、ボックスの中に真っ赤ないわゆる「チャイナレッド」を使い、大胆でわかりやすいデザインに作り上げている。

「中国李寧」という4つの字が中国のカルチャー、スポーツとファッションを十分カバーできると考えたリーニン(李寧)の戦略は、見事にあたった。

若い世代の消費力が急速に高まっていく中で、彼らは上の世代よりも自国のカルチャーに自信があり、ナショナリズムを感じるほどの中国テイストを好み、国産品に対する受け入れ力も強い。中国のGDP自体の大きな上昇と人々の消費力の向上に伴って、以前は当然のように言われていた「海外ブランドが上位を占め、中国国内ブランドは下位を占める」という定説が大きく揺らぎ始めている。いまや「中国を着る」ことはダサいことでもなんでもない。

またボックスロゴの打ち出しとともにニューヨークファッションウィークへの参加を始めたことも大きな変化のひとつだ。ニューヨークファッションウィークへの参加後、リーニン(李寧)は「国潮」(中国テイストのファッションスタイルブーム)を巻き起こした。
» 参考:【白熱する中国のドメスティックスポーツアパレルブランドたちの戦い】

「国潮」は新語ではない。数年前から、中国ブランドのFeiyueとWARRIORを中心に「国潮」は受けれられていくようになり、若者の中で人気を博していた。

古き良き中国を感じるようなデザインが多い「国潮」だが、その本質は、昔を懐かしむような単なるレトロブームではない。若者に「国潮」と呼ばれるようなアイテムは、ファッション性が受け入れられていると同時に、国産品やカルチャーをリスペクトする気持ちも含まれている。

リーニン(李寧)のDNAには力強い「中国」「アスリート」の気質があり、その精神性が「国潮」ブランドとして受け入れられている。この点において、リーニン(李寧)はANTA(安踏)やXtep(特歩)など他の中国国内のスポーツアパレルブランドにはない強い優位性を持っているといえる。

言い換えると、リーニン(李寧)はブランドとしての商品提案力とブランディングの強化によって、「国潮をリードしている」というポジションを確固たるものにしたといえる。

ニューヨークファッションウィーク後、「悟道」グラフィックなどの国潮を感じさせる商品は中国国内ですぐに完売することも増え、これらの「中国李寧」シリーズはブランドに大きな利益をもたらす持続的なラインになった。1枚のTシャツは300元(約4,500円)程度、パーカーは500〜900元(約7,400〜13,000円)程度で、秋冬物のシリーズは平均単価1,000元(約15,000円)を超え、一般的な「李寧」ラベルの服の価格より2倍以上高くなっている。

「中国李寧」という文字は、リーニン(李寧)が夢に見ていたブランドのプレミアム化を実現できるラインに成長していくかもしれない。

今ではニューヨークファッションウィークだけでなくパリファッションウィークにも参加し、さらなるブランドポジションの確立を狙っていくリーニン(李寧)。

10年前には夢にも思わなかったリーニン(李寧)の快進撃はまだ続く。

兒玉キミト

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