fbpx

上海ファッションウィークの歩みにみる、中国ファッションマーケットのこれから

Fashion

(WFN撮影)
world

盛況に終わった上海ファッションウィーク2021秋冬

上海ファッションウィーク

約1年前の2020年の春、新型コロナウィルスの影響を受け上海ファッションウィーク2020秋冬はアリババグループのECプラットフォームTmallを活用したオンラインでの開催を余儀なくされた。

あれから1年、中国大陸における新型コロナウィルスの影響はかなり小さくなり、その反動もあり2021年4月の2021秋冬シーズンは過去と比較してもとても盛況なシーズンとなった。

例年10日間ほどの日程に集中させる上海ファッションウィークだが、2021秋冬シーズンは、新型コロナウィルス感染予防のための日程の変更の影響があったこともあり、非公式な日程も含めると1ヶ月近い長めの開催となった。

ランウェイショーや受注展示会といった例年通りのスケジュールの他にも、GQ、栩栩华生、fashion bazaarの3大メディアブランドによるイベントや、人気SNS REDによるサロンイベント、北京服装学院の生徒による作品発表、DIOR(ディオール)の2021秋冬ファッションショーなどイベントが目白押しで、ファッション業界関係者やバイヤーたちは多忙を極めた。

上海ファッションウィークの歩み

上海ファッションウィーク

上海ファッションウィークは2003年にファーストシーズンを発表し、国外ブランドの誘致や中国ドメスティックブランドの発掘・育成など、中国のファッションシーンにおける様々な役割を果たしてきた。

経済は順調に成長してきた上海だが、上海ファッションウィークの道のりは全てがスムーズだったわけではない。試したことがうまくいかず、試行錯誤が続く日々もあった。

本当の意味で順調になり始めたのは、2017年4月からだといえる。上海ファッションウィークが初めて「アジア最大のオリジナルデザイナーズブランドのオーダー獲得に結びつけるシーズン」というコンセプトを掲げたのだ。それまではアジアのデザイナーズブランドのマーケットといえば日本・東京が挙げられていたが、この頃から中国が世界で最も重要なマーケットの一つとなった。

また、中国のインディペンデントデザイナーが海外のファッションウィークやセレクトショップでの露出を増やしていったことも影響し、上海ファッションウィークは新たなポジションを獲得することに成功したといえる。

中国はマーケットが急成長しているため、上海ファッションウィークはもともとは世界的なファッショントレンドをリードするポジションではなく、急成長なマーケットを埋めていくためにも「アジア最大のオーダー獲得に結びつける」というコンセプトがどうしても必要だった。

「オーダー」や「マーケット」と深く結びついているという点において、「商業性」が色濃いファッションウィークであり、そこがパリやニューヨークなどのファッションウィークと大きく異なる属性だともいえる。

デザイナーズやクリエイター色の強いファッション業界では、クリエイションの議論と比べるとビジネスの議論はあまりしないのが一般的だが、こうした前提をあまり踏襲せず、上海ファッションウィークでは商業性を意識し合理的に行われている。

この合理性がいいバランスでその存在感を増し始めた2017年から2021年まで、コロナ禍も経たこの4年を、再度振り返る時期が来ている。

ここ数年での上海ファッションウィーク自体の成長と発展は、インディペンデントなデザイナーやブランドにある意味商業的な解決策を提供してきたともいえる。商業性の強いファッションウィークがブランドとショールームとショップを繋ぎ、流通の拡大に寄与している。

独自店舗やECサイトを構えているブランドもあるものの、中国でも大多数のデザイナーズブランドは卸売りをメインとし、展示会やショールームを通し販売している。

中国のセレクトショップの変化

上海ファッションウィーク

10年前の2011年の段階でも中国ではまだ、本当の意味でのインディペンデントなデザイナーズブランドは少なく、またそれを扱うプロフェッショナルな展示会やショールームも、セレクトショップもとても少なかった。2013年にできたコルソコモも鳴り物入りでオープンしたが6年後の2019年に閉店。ただ、2018年にドーバーストリートマーケットがオープンしたあたりには気流が変わってきていたように感じる。

中国国内のデザイナーたちが直面しているのは、かつては中国大陸でも大きな盛り上がりを見せた香港系の商業施設やセレクトショップの(全てがそうではないものの)低迷、そしてストリートショップや小規模個人経営から続々とモデルチェンジしてきたセレクトショップの大幅な増加だ。

それらの大半はもともと専門だったわけではなく、知識や経験ゼロから始まっているショップも多く、やりながら学んできている。

もともと中国では商業的なブランドの代理店が新業態として始めることが多かったセレクトショップ業態。

中国国内の有力な代理店がセレクトショップ業態へのモデルチェンジもしくはモデル拡充を行ったことがひとつの転換期になっている。

注目すべき点は、これらのタイプのショップは、モデルチェンジしても根本的な考え方は変わっていない。欧米や日本のセレクトショップのように統一したスタイルや特定の基準でブランドを絞り込むのではなく、「売れるものは売れる」というスタンスのショップが多かった。

これは、流通額という点ではマーケットに大きな影響を及ぼしたが、文化的な影響力はまだ大きくなく、中国のコレットになるのも難しい状況だった。

その後、小規模個人経営からモデルチェンジしたセレクトショップの大幅な増加があり、2018、2019年ごろにセレクトショップのバブル崩壊が起こってから、中国のファッション業界はセレクトショップの将来をやや慎重に見ていたが、2020年の新型コロナウィルスの問題が、結果的に消費のカンフル剤とショップの新陳代謝を促し、新たな成長の兆しを迎えている。

中国のセレクトショップとデザイナーズブランドとショールームの特殊な関係

上海ファッションウィーク

また、かつては卸売り市場や外販で商品を仕入れることが多かった中国のセレクトショップだが、デザイナーズブランドが増え始めて服自体の力はアップグレードされた。しかし、地元の人間関係を頼りに常連客に商品を売るというやり方に変わりがない都市も多い。

このプロセスでは、デザイナーズブランドはマーケットから十分のフィードバックを直接得ることができないため、マーケットに向けて調整をすることが難しい。

次に在庫の問題がある。中国のファッションマーケットは、従来から販売チャンネルつまり店舗が一番の発言権をもつ。セレクトショップが柔軟な補充や委託販売を希望することが多いため、ブランド側が在庫をもつケースも多い。同時に、ライブストリーミング方式で販売する店舗も多くなり、ブランドにとって商品管理はさらに難易度を増している。

つまり、高い評価を得ているごく少数のブランド以外、ほとんどのインディペンデントなデザイナーズブランドがセレクトショップと提携する際、セレクトショップに主導権を握られがちになっているともいえる。

このような、一見相互依存でありながら矛盾の多い特殊な関係は、ブランドとプラットフォームやショールームとの間にも見らる。

プラットフォームやショールーム、例えばLabelhood、DIA COMMUNICATIONS、XCOMMONSなどは、中国の地元の独立したデザイナーズブランドを支援することを目指している。Labelhoodは前衛ファッションアートのインキュベーションプラットフォームとして自身を位置づけており、上海ファッションウィークの公式スケジュールにも登録され展示会を行っている。

Labelhood傘下のショールームには今シーズン、Xander Zhou、Private Policy、Yueqi Qi、Oude Waagなど、31つのデザイナーズブランドが並んでいる。

同じく、ファッション配信プロモーションプラットフォームXCOMMONS colorfareはさまざまな分野でのコラボレーションを活用して、ブランドのマーケティングを支援している。同時に、同プラットフォームの傘下にはNot Showroomが設けられている。このショールームは10シーズン目に入り、RUI、XIMONLEE、SAMUEL GUÌ YANG、ATERLIERSÓ、8ON8など、今の若者が好むテイストのデザイナーズブランドが多数集まっている。

DIA COMMUNICATIONSはXCOMMONSと組織体制が似ていて、プラットフォーム傘下にはTUBE Showroomを持っており、SHUSHU/TONG、Calvin Luo、XUZHI、YVMIN尤目、Susan Fang、Shuting Qiuなどのブランドを取り扱っている。

全体的に見ると、ショールームをメインとするこの3つのプラットフォームは、メディアへの注目度が最も高い中国のデザイナーブランドを集めており、中国特色のある業界の現状を示している。

これらのプラットフォームのアイデンティティには柔軟性や表現力があり、ブランドのよさやストーリー、哲学を伝える力に長けている。これら3つのプラットフォームはマーケティングやPRに長けている一方で、商品を流通させる営業体制はまだ完全には整っておらず、営業にはまた違うスキルや経験を必要としているともいえる。

中国デザイナーズブランドの発展における初期段階では、メディアへの露出と業界におけるメンターが必要で、上述の3大プラットフォームはそのためのPRの役割を担っているが、ブランドが求めている全ての機能や人材が備わっているかというと、そこまで言うのはまだ時期尚早だと言えるだろう。

ひとつのプラットフォームがすべてをやろうとするのは現実的ではないという声もあり、必然的にショールームによっては細分化と専門化の方向に向かっているのが中国の現状だと言える。

一方で、3大プラットフォームのひとつであるLabelhoodが上海ファッションウィーク期間中に開催したフォーラムで、中国のデザイナーズブランドにビジネス「統合型」のサービスを提供していく意思を示した。

ブランドのために卸販売を含めた販売のマルチチャンネル化、ブランドマーケティング、物流など一連の商業的な問題を解決し、デザイナーをデザインと生産に専念させることを目的としている。

Labelhoodによると、2019年にはすでにSF物流会社と提携し、自身初の中国デザイナーズブランドのための物流拠点を設立した。サプライチェーンを整えていくことで、ブランドの物流体制を整えていくという。

Labelhoodは2020年から上海ファッションウィークと提携し、SHUSHU / TONGなどのブランドと共同でアリババグループのECプラットフォームTmallでの旗艦店を運営し始めた。上海ファッションウィーク中にもコレクションショーを生中継したことからも、デザイナーズブランドのデジタル化への野心を感じる。

Labelhoodのブランド向けサービスは設立当初のPRや販売としての機能提供からより経営のための高次レベルのサービスに移行し、経験不足からくるデザイナーズブランドの経営の未熟さを克服しようとしていることが感じられる。

もちろん、デザイナーズブランドによって課題は異なるし、その異なる課題をどう統合して標準化し、まだまだ若いブランドとプロフェッショナルなチーム体制を長期的にどうつくっていくのかはまだ分からない。そのため、短期的には、ブランドによって不公平が生じることもあるだろうし、それに不満をもった一部のブランドがプラットフォームから独立することも考えられるだろう。

希薄化していくブランドカテゴリの境界線とD2Cの重要性

上海ファッションウィーク

また、中国の販売チャンネルの変化もこれから加速していくだろう。

中国のドメスティックストリートブランドとして安定した人気もあるROARINGWILDを例に例えると、今回の2021秋冬では、ショーをLabelhoodブースにて行い、合同展であるOntimeshowにも参加した。これは卸売チャンネルを増やし、これまで手が届かなかった客層を増やそうという狙いがある。

このようなブランドは本質的にはデザイナーズブランドと違うが、消費者には売り場ではほぼ区別されることはない。そのため、このようなトレンドブランドやストリートブランドがデザイナーズブランドのマーケティングシステムに入ると、デザイナーズブランドのマーケットも圧迫される。

逆に、現在一部のデザイナーズブランドはすでにオンライン市場に参入し、独自の販売チャンネルを開設し、オンライン上でより多くの消費者と向き合うD2Cの可能性を高めている。

だが、マーケットが伸びているため、このブランドカテゴリの境界線の希薄化を気にかけているブランドはあまりいないだろう。新型コロナウィルス問題は結果的に中国の消費に刺激を与え、2020年末にV字回復を見せたのち販売量も全体的に上昇している。2021年の発注量が昨年2020年に比べて伸びている合同展やショールームも多い。

上記の3大プラットフォームが代表する中国のニッチなデザイナーズブランド市場のほかに、MODE shanghai、時堂(showroom shanghai)、Ontimeshowといった200ブランド以上を誘致する大型合同展、そしてTudoo、ALTER、DFOが分割したNovaとDadashowなどの中規模合同展やショールームも存在し、それ以外にも小規模のショールームも新しく続々と登場している、日本のショールームもこの数年進出を増やしている。

ショールームの増加はマーケットの広がりを象徴しており、ブランドカテゴリの希薄化によってデザイナーズブランドの販売量は増加したものの、その分シーズンごとに新しいブランドがどんどん市場に入ってきて、競争も激化してきている。

前述したようにブランドはセレクトショップやショールームと比較して交渉の立ち位置がやや弱いのが現状なので、競争が激化していく中で、ブランド自身が強くなっていくことが今後大切になっていくだろう。

そのために、商品やショーを通じて斬新で良質な提案を続けることももちろん重要だが、ブランドの直販モデルも強めていくことがブランド自身を強くしていくために重要なことになっていく。

マーケット、つまり顧客と直接コミュニケーションできる仕組みも構築し、それによって売上・利益・情報を積み重ねていく。

それは日本ブランドにとっても重要なポイントのひとつだ。単純な直販という意味合いだけのD2Cではなく、デジタルを上手く活用した顧客との直接コミュニケーションという意味でのD2Cが重要といえる。

セレクトショップとブランドとショールームの関係性の変化、そしてブランド自体がやるべきことの変化。

これからの中国ファッションマーケットにおいて、観察すべきことは絶えない。

兒玉キミト

人気記事【中国最大級の合同展示会 Ontimeshow 2021A/W レポート】

人気記事上海ファッションウィーク2021AWの合同展にShowroomCATSなど日本ブランドも参加

Youtube動画勢力図に変化が生じ始めた、中国大手セレクトショップの変遷とこれから